金木犀の香りがすると、妻は今でも不妊治療をしていた頃を思い出すそうです。
「今年もこの季節がきた」
「去年も、この香りを嗅ぎながら病院に通っていた」
「来年こそは、妊婦になってこの香りを嗅げますように」
治療中は、一年はあっという間なのに、一か月がとても長い。期待して、落ち込んで、また気持ちを立て直して病院へ行く。その繰り返しでした。
そして気づけば僕たちは、
「授かったら旅行に行こう」
「授かったら、これをしよう」
と、人生のいろいろなことを「授かったら」の先に置くようになっていました。
でも治療が終わったあとに残るのは、治療の結果だけではありません。
その時間を、夫婦でどう生きたか。
旅行に行かなくてもいい。
特別なことをしなくてもいい。
一緒に笑うこと。
くだらない話をすること。
二人でコーヒーを飲むこと。
そんな何気ない時間も、治療と同じように大切な「人生の時間」だったのだと思います。
治療は人生の大切な一部です。
でも、人生そのものではありません。
今回は、長引く不妊治療の中で、僕たち夫婦が忘れかけていた「二人で生きる時間」について書きました。
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