日本産科婦人科学会・特定生殖補助医療に関する運用検討小委員会におきまして、今年の6月に廃案になった「特定生殖補助医療法案」についての講演をする機会をいただきました。
代表の寺山からは、『親と医療者が共有すべき視点とは』 - AID当事者支援の経験から見えてきたこと - と題して、下記のようなお話をさせていただきました。
第三者の精子提供(AID)によって子どもを授かる家族の数は、近年、確実に増加しています。しかし一方で、 親が治療を受ける際の心理的準備や、治療後の家族形成における課題については、依然として十分な議論がなされていません。
私は、自身が無精子症を経験し、提供精子によって子どもを授かった当事者として、同じ立場の夫婦を支援する活動を続けています。その活動を通して強く感じるのは、 「AIDは親の希望を叶える医療であると同時に、将来を生きる『子ども』の人生を始める医療でもある」ということです。したがって、 親と医療者が共有すべき最も大切な視点は、「治療前から子どもの視点で考える」ことだと考えています。
親たちは無精子症という現実を前に、「どうすれば子どもを授かれるか」という“方法論”に意識が集中しがちです。 しかしながら、 「子どもが生まれれば幸せになれる」「子どもが幸せを運んで来てくれる」という思いのもとで治療に踏み切ると、結果的に『親のニーズに応える医療』に偏り、子どもの「知る権利」や「出自をめぐる心の安定」が後回しになりかねません。このため、 提供精子で子どもを迎える親には、治療技術の選択以前に、まず「親としての準備」が必要です。
その準備とは、次の3つの段階を指します。
1.不妊の自分を受容すること
2.「なぜ子どもが欲しいのか?」という原点を夫婦で再確認すること
3.親子の信頼関係を築いたうえで、告知の準備を整えること
これらの3つの準備は、 AID治療を始める前、すなわち出産よりも前の段階で、夫婦が共に時間をかけて作っておく必要があります。
なぜなら、 子どもが生まれてから考えるのでは、すでに遅いからです。前回の特定生殖補助医療法案では、「告知支援」や「ドナーの匿名・非匿名性」といった制度面の議論が中心に進められていました。しかし、 これらの制度を整えるだけでは、真に「子どものための法律」にはなりません。
それは 「ドナーの匿名・非匿名性」以前に、子どものために、親がどのような覚悟と理解を持って治療に臨むのか、という点が問われるべきだと考えるからです。
ここにこそ、医療者と当事者が共に取り組むべき、最も本質的な課題があると感じています。
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